恐るべし蕁麻疹

平成19年4月15日

 

 シェムガンから帰ると背中が痒い。またもダニの襲撃かと眠れない一夜を過ごす。翌日、事務所で背中を見せると「虫刺されではない」と言う。「菌かビールスの仕業だ」とのことで、早速病院に行く。インド系の美人女医だ。先ずは菌かも知れないとのことで、腫れたところをかきむしり顕微鏡で検査。菌ではなさそうだ。残るはビールス。食べ物の仕業でもなさそうだ。原因は分からないが一応「蕁麻疹」と言うことで、飲み薬と塗り薬をもらう。

 この病院、藪医者で有名だ。最初からあまり乗り気はしなかったが、何しろ病院はここしかない。行くと先ず最初に血圧を測る。昔、看護婦が良く使った古めかしい血圧計だ。今までに血圧で問題になったことはないが、ブータンに来てから180と言われたことが何度かある。高地のためかもしれないがびっくりする。一度、下が100という時があった。こちらの人は、下の血圧を問題にするようだ。しかし、何とも信用の置けない血圧測定だ。機器らしいものはほとんどない。目と手と勘で、後は薬を出すだけだ。とても病気にはなれない。しかし、全て無料であるのは有難い。病院と医療はほとんどインドマネーに頼っている。

 蕁麻疹を広辞苑で引くと「急性皮膚病の一つ。灼熱感、かゆみとともに急に皮膚に限局的な浮腫が生じ、表面が紅色または蒼白となり、時に周囲が紅く腫れる。数時間内に消散するが数日にわたって反復することもある。アレルギーによる血管壁の過敏に基づくもので、寒冷、日光、植物毒(蕁麻、漆など)、動物毒(昆虫)、薬品などの外部刺激や筍、卵、魚肉、牛乳などの飲食物が誘因となる」とある。

 シェムガンでの体験から、動物毒(昆虫)と魚肉が考えられる。農家の接待で生魚の煮付け料理があった。動物毒は避けて通れない。さらに薬品の刺激が思い当たる。ダニ除けのため、シーツの下にダニシートを直に敷いたことがある。いずれにしても、これらのうちのいずれかが原因であろう。決して夜遊びはしていない。

 JICA事務所の健康管理委員に連絡すると「疲れとストレスが誘因となることもあります。規則正しい生活が大事です」とのご宣託。最もな答えではあるが、広辞苑とは違う。家庭医学大全科とも違う。8日間の歩き詰めだったので、疲れは考えられる。治癒力が低下していたことも事実だろう。いずれにしても、真皮にある肥満細胞の白血球から出てくるヒスタミンという物質によるようだ。


 

 原因が分かれば一安心。回復傾向にはあるものの、1週間たっても痒みが取れない。再度、美人女医に会いに行く。「日本人だから特別にこれを上げる」と言って、タイ製の痒み止め軟膏とビタミン剤をくれた。確かにブータン料理の偏食で、ビタミン不足になっていることは考えられる。例の健康管理委員、「女医さん美人でしょう。私の友人の妹さんなの。アンビカというんだけど、うつつを抜かしていたらダメですよ」と忠告。余計なお世話だ。

 一人暮らしの病気ほど不安なものはないが、断続的に来る痒みにはいささか参った。気力が萎えいでしまう。やはり健康が一番だ。