環境整備大作戦

平成19年4月20日

 今日はカレンダーには載っていない休日である。2008年にブータンで歴史上初めて、総選挙による国会議員が選ばれる。その準備と予行演習のためだ。

 ブータンは国王を元首とする君主制の国家だ。成文憲法はなく、国王は内閣を任免し、国会議員の一部や高等裁判所の裁判官の3分の2を任命するなど、事実上絶対的な権力を持っている。しかし、1998年の政治改革以降、国王は行政権を放棄し、国家元首の地位には留まるが、閣僚の任命権を国民会議に委ね、任期を1年に定めた輪番制の首相職の制度を導入するなど、立憲君主制への移行を模索していた。それにしても国王の信頼は絶大で、どんな田舎でも国王の写真を飾っていない家はない。いうなれば現人神である。

 当事務所はこの休暇を利用して、環境整備大作戦を敢行した。当日、我がロッジのモンちゃん、ケンちゃん2人の小さな労働力を引き連れて参加した。道路、庭園、農場の3班に分かれての敢行である。道路班は穴ぼこの修理。砂利とコールタールを持って出動。農場班は田植えと畑の整備だ。庭園班は門の前の芝生と憩いの場つくりである。私はこの庭園班に参加した。黙々とよく働くもの、口は達者だが手足が遊んでいるもの。何処の国でも一緒だ。


 

 昼食をタシ宅に呼ばれる。早速ビールである。生温い、しかし汗をかいた後の一杯は美味しい。タシが「チュメの農家が農機具事故で亡くなった。5万ニュルタム用意しなければならない」と言う。今日は銀行も休み。「1万ならある」と協力を申し出る。「残りをどうするか。アンドラスに頼もう」ということになる。アンドラスはオーストリアから派遣された技術者だ。ブータン人は頼りにならない。

 午後はビールも入るし、真っ赤な顔ではとても仕事にならない。日本語ドルジの車の中で昼寝をすることにした。3時、「お茶だ」と起こされる。またもビールが出る。「飲みたくない」と言いながらも飲んでしまう。酒の誘惑には抗しきれない。痛い頭でタシとワンダの子供の相手。クローバーの花を摘んで、花の首飾りを作ってやる。大人気である。タシが一心不乱に携帯で電話している。アンドラスも1万しか用立てできなかったようだ。3万不足している。かなり焦っているようだ。後は商店やホテルにお願いするしかなさそうだ。6時には持参しなければならない。王妃からの弔慰金とのことだ。その立替払いである。しかし、何故王妃からの届け物なのか理解できない。これもブータンのしきたりのようだ。国王の写真がどの家にも飾られている理由が、この辺にあるのかもしれない。ドルジの車で1万ニュルタムを取りに戻る。後は早々とベッドで居眠ることにした。

 とんだ環境整備大作戦だった。枯れ木も山の賑わいである。戦力には決してなっていない。子供のご機嫌取りと弔慰金の協力ぐらいか。それにしても5万用立てできたのか、ちょっと気になった。