エクアドル便り112号

国力の方程式

 

中国が日本を抜き、世界第2位の経済大国になった。地域格差や環境問題、一党独裁の共産主義体制など多くの課題を抱えながらも年率7.2%の経済成長を続けている。アメリカを頂点とした世界の座標軸が変わりつつある。BRICsの台頭である。

中国は13億5000万人の人口と世界第3位の国土を有する。インドは12億の人口と世界第7位の国土、ブラジルは2億の人口と世界第5位の国土を有する。大航海時代の植民地統治が許されない時代において、国土と人口は大きな武器だ。因みにアメリカは3億の人口と世界第4位の国土、BRICsの一角をなすロシアは1億4000万の人口と世界第1位の国土を有する。日本は1億2000万の人口に世界第61位の国土だ。しかも人口は2010年から減少に転じ、2043年には1億人を割ると総務省統計局は言っている。

それにしても今の日本の政治は見るに見かねない。日替わり弁当のように首相が変わり、政策ではなく政局に明け暮れている。経済は蛸壺に入った状態で、財政赤字は1000兆円になろうとしている。国民1人当たり800万円弱の借金だ。迷走日本の評価は地に落ちている。

  

丸の内                 応援猫

「国力の方程式」というのがある。元CIA副長官でジョージタウン大学教授レイ・クライン氏によるものだ。

国力=(人口と領土+経済力+軍事力)*(戦略+実行する意思)

である。日本は蛸壺に入り中国にその座を譲ったとはいえ、経済力はまだ世界のリーダーとしての地位は維持している。しかし斜陽であることは間違いない。これから問われるのは、戦略とそれを実行する意思ではなかろうか。不利を有利に、ネガティブをポジティブに変える総合的な政策と実行力が問われる。マックス・ウェーバーは著書『職業としての政治』で、「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわじわと穴をくり貫く作業である」と述べている。地道な努力と意思が問われているのだと思う。

 マハトマ・ガンジーは「七つの大罪」として次の言葉を述べている。

1.        哲学なき政治

2.        道徳なきビジネス

3.        労働なき富

4.        人格なき教育

5.        人間性なき科学

6.        倫理なき快楽

7.        献身なき宗教

どれ一つとっても心に沁みる言葉である。

 安倍元首相は、「戦後レジームからの脱却」を掲げ総理になったが、アメリカの占領政策に「3R、5D、3S」というのがあった。

3Rは復讐(Revenge)改組(Reform)復活(Revive

5Dは武装解除(Disarmament)軍国主義の排除(Demilitarization)工業力の破壊(Deindustrialization)内務省や財閥の解体(Decentralization)民主化(Democratization

3Sは性の解放(Sex)映画・テレビなどのスクリーン(Screen)スポーツ(Sports)である。

日本を骨抜きにし、2度とアメリカに対しはむかわない国とし、日本人の魂を抜き、3Sに興じさせておけというものだ。未だに日本はアメリカから自立していない。白洲次郎の気骨が偲ばれる。

 海外から日本を見るにつけ、今ボランティアを必要としているのは日本ではないのかという気がする。戦後の荒廃から追いつき追い越せと、企業戦士として経済発展に身も心もすり減らし戦ってきた結果が、今の日本である。またこのような日本にした責任の一端は、我にありとも思う。生まれ育ててくれた「美しい日本」、黄昏時を迎えようとしているが、ささやかな恩返しが出来ればと思っている。

 

平成22年10月10日

須郷隆雄