エクアドル便り19号

エクアドルの年末年始

 

 エクアドルでは12月25日のクリスマスと1月1日の元旦が祝日だ。日本のような年末年始の休暇は無い。しかし概ね24日のクリスマスイブから新年の4日ぐらいまでは休みをとるところが多い。

 クリスマスが近づくと至る所で仮面を被ったり、踊ったり、音楽を演奏しながらパレードが繰り広げられる。それは決まって教会に向かう。それを見物に行くのも年末の楽しみだ。しかし広場でボリュームを最大限に上げ、歌ったり踊ったりしているのには閉口する。近くの店のおばさんに「あの騒ぎは何だ」と聞くと、「ミサだ」と応える。ミサでは文句を言えない。色々なミサがあるものだ。この騒ぎもクリスマスを祝う信仰心からなのだろう。夜の12時過ぎまでドンチャン騒いでいるときもある。寝不足になってしまうが、「やかましい」と苦情を言う人もなさそうだ。むしろ楽しんでいる風でもある。

 各家庭にはイルミネーションが灯され、住宅街がネオン街に変わる。簡素に室内だけを飾っている家庭もあれば、盛り場のネオンのように家の外までデコレートしている家もあり、様々だ。最近は日本でもこのようなことをする家も増えて、年々エスカレートしているように思う。店舗も同様だ。事務所は部屋ごとにしめ縄ではないが飾り付けをし、日本の正月を思わせる。


 

                 クリスマス

 

          パレード

 イブにスークレ公園に行ってみた。公園全体がイルミネーションで飾られ、バンド演奏も入っている。大道芸も行われていた。「何処からのお客様かな」「日本から」「これはこれは遠くから」「遠来のお客様に拍手を!」大喝采を受けてしまった。しかし他の公園は静まり返っていた。

 それから年始まで、同じ様な騒ぎが続く。大晦日が近づくと今度は各家庭といわず、店の前にも色々な張りぼてが飾られる。腕の見せ所なのだろう。なかなかの傑作もある。午前0時。新年を迎えると一斉に花火を打ち上げ、その張りぼてに火を入れる。家庭ごとの小さな火の祭典だ。日本の送り火のようでもある。なかなか賑やかだ。元旦は寝静まったように店は閉ざされ、昨夜の燃え残りが各家の門前に黒く放置されている。寝正月だ。元旦は町が一番汚れている。着飾ったお姉さんが歩いているわけでもない。新しい年の始まりというのに、全ての行事が終わった宴の後といった感じだ。キリスト圏では正月はクリスマス休暇中の1つのイベントという位置づけのようだ。日本とは大分違う。

 日本では、先祖供養としての仏教行事「盂蘭盆」に対し、正月は年神様が家庭に訪れ、家族でもてなし、その年の健康と繁栄、豊作を祈る「神祭り」として位置づけているようだ。中国、韓国、台湾やベトナムなどでは太陰暦の1月1日(2月の初め頃)を正月とし、タイなど南アジアでは、太陽が白羊宮に入る4月13日ごろが正月。シンガポールやマレーシアのようにヒンズー暦、イスラム暦、太陽暦、太陰暦に基づき、正月が年4回もある国もある。イランなどイスラム圏では春分の日が正月とされているようだ。

 古代ローマでは1年は10ヶ月とされ、3月の1日が正月とされた。年の初めとしてMarchと付けられたのがうなずける。SeptemberOctoberNovemberDecemberがそれぞれ7番目、8番目、9番目、10番目を意味することも、なるほどと思う。紀元前700年ごろJanuaryFebruaryが付け加えられたのだそうだ。歴史を紐解くと面白い。

 「正月は冥土の旅の一里塚、めでたくもあり、めでたくもなし」 

 

平成21年1月3日

須郷隆雄