9月28日日曜日、エクアドル新憲法承認のための国民投票が実施された。
コレア大統領は5つの改革を掲げ、2006年の大統領選挙で勝利した。それは「新しい民主的な憲法をつくる憲法革命」、「腐敗とのたたかい」、「新自由主義の克服を目指す経済革命」、「貧困・格差の解消を目指す教育・医療革命」そして「地域統合の推進」である。結果は70%近い投票を得て、憲法改正が承認された。
エクアドルは人口が1300万人、先住民と白人の混血メスティーソが6割、先住民インディオが3割だ。貧困は先住民に集中している。しかも、総人口の上位所得者10%が国民所得の40%以上を占め、下位所得者10%の所得は1%に満たない。この貧富格差はIMFによる新自由主義の押し付けによるとも言われている。
コレアは「祖国とは土地のことではない。土地によって育てられた人こそが祖国だ」というインドの国民的詩人タゴールの言葉を引用して、改革に挑んだ。
新憲法の要旨は、まず領土主権である。外国軍基地あるいは軍事目的の外国施設は認めないとし、09年秋に期限切れを迎える米軍基地の活動終了と撤退を確認している。
経済体制は人間を主体とし、社会と国家、市場と自然の調和を図る。開発の形態は、正しい生き方、調和の取れた生活の実現を保証する持続可能な集合体としている。コレアは、この20年間、市場の独裁を経験し、人間を市場に従わせたため、計画性やあらゆる公共的なものが破壊されたと振り返り、資源主権を保証し、富の公正な分配を規定した。
「正しい生き方」の概念は、個人、共同体、自然に及ぶと指摘し、「個々人は経済、社会、文化的に必要な財とサービスを享受するが、それは消費主義や贅沢とは無縁である。共同体では、人間開発の指数が集団的なもので測られる。自然は、環境保全にとどまらず、生命の起源、ヒトという種が生存する唯一の可能性を持つべきものである。」と強調している。
さらに、雇用関係は雇用主と労働者の二者間の直接関係であり、不安定な雇用のあらゆる形態、いわゆる派遣労働等を禁止している。
また、食料主権を掲げ、国民が常時、健全かつ文化的生活をするために相応しい食料を自給できるように保証すとした。エクアドルは農業国だが、バナナやカカオなどの輸出農業が中心で、穀物自給率は73%にとどまっている。そこで、中小農家や家族農業を育成する方針を示している。
なお、公教育は無償とし、公的医療も無償とした。
エクアドルはあらゆる形態の帝国主義、植民地主義、覇権主義を批判し、その抑圧に対する抵抗とそれから自由になる権利を認めた。そしてラテンアメリカ、カリブ海諸国との連帯と統合を国家目標とした。今、南米諸国連合の事務局は首都キトに置かれている。ラテンアメリカではいま、エクアドルを含め21世紀の社会のあるべき姿の模索が始まっている。
ラテンアメリカは長い間のアメリカへの従属の歴史から脱却し、富の公正な分配と貧富格差の是正に立ち上がろうとしている。今南米が面白い。そんな気持ちを強くした。マンネリ化した日本も、変革期にある南米から学ぶべきことが多々あるような気がする。
平成20年9月28日
須郷隆雄
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