エクアドル便り61号
進化論の舞台ガラパゴス
(サンタ・フェ島から海ガメの入江へ)
仲間たち10人 サボテンを食べる陸イグアナ
YAMAHAのゴムボートでサンタ・フェ島に向かう。脇をサメが泳いでいる。ウェット・ランディングで砂浜に上陸する。アシカの家族が砂浜で朝からお昼寝だ。どうもアシカは朝だけ漁をして、後は寝ているようだ。雄アシカはハーレムを守るため、遠くで相変わらず「ウォ、ウォ」と吠えている。ハーレムというと女どもを侍らせ、夜な夜な饗宴に興じている羨ましい男を想像するが、アシカの世界は結構大変なようだ。体力も精力も衰えると若い元気なアシカに取って代わられてしまう。自然の掟だ。
からたちのような棘々の木が青々と茂っている。10mはあろうかと思われる巨大なウチワサボテンが聳えている。中は海綿状で貯水槽の役割を果たす。鳥がその幹を突付いて水を吸うそうだ。エルニーニョの時は大雨でサボテンが枯れる。餌を失って魚もいなくなる。ガラパゴスの環境を維持するにはエルニーニョは大敵だ。動物や植物、魚にとって乾燥した気候がガラパゴスの進化には必要なのだ。
ひょうきんなペリカン 船に群がる魚
船に付いた貝殻に魚が群がっている。海水が思ったより冷たい。グンカンドリがマストに群舞。羽を休めている。ガラパゴスの動物たちは人が恋しいようだ。何処までも青い太平洋。デッキでオランダ女性ジョアンナがビキニ姿で甲羅干し。グンカンドリになりたい気分だ。上半身そのビキニ姿で昼食に登場。何ともグラマーだ。視線は自ずと胸の谷間へ。
2時間のシエスタ(昼寝)の後、サンタ・クルス島のウミガメの入江へ向かう。グンカンドリが絶え間なく群舞している。ゴムボートでエンジンを止め静かにマングローブの入江に入っていく。ウミガメの繁殖地だ。ガイドのペペがウミガメの雌雄の営みを説明する。ウミガメが静かに泳いでいる。説明を聞くより写真を撮るのに忙しい。呼吸のため時々顔を出す。
羽を休めるグンカンドリ マングローブの入江のウミガメ
帰りがけボートの中でルイスが私に聞く。「何歳か」と。正直に「63歳」と答える。「メンティーラ(嘘)」「50にしか見えない。私より白髪が少ない」と言う。嬉しいような、情けないような複雑な気持ちだった。髭を生やしたのは年相応に見せるためだ。夕日に、カラスの大群のようにグンカンドリが乱舞していた。
ガラパゴスの夕日が空を染め、太平洋に影を落とし静かに沈んでいった。星座を見分けられないほどの満天の大きな星と天の川、何処までも黒く深い海。吸い込まれるような恐怖心。GALAXYとは銀河。1人、銀河系に漂う恐怖と孤独を味わった。「空を飛ぶ 鳥のように 自由に生きる 今日の日はさようなら また会う日まで」
平成21年10月21日
須郷隆雄