ビジャマリア情報27
2005.7.30.
Villa Maria, Cordoba, Argentina
須郷 隆雄
イグアスの滝はアルゼンチンの北東部、ブラジルとパラグアイに国境を接したミシオネス州の突端、プエルト・イグアス市にある。落差80メートル、滝幅4キロ、水量は毎秒65,000トンという世界最大の大瀑布だ。世界遺産にも指定されている。「イグアス」とは、先住民グアラニー族の言葉で「沢山の水」という意味だ。
悪魔ののど笛 滝突っ込みツアー
いよいよイグアスの滝へ。昨夜とは打って変わって薄曇、ちょっと残念。さすが世界の観光地、大勢の人でごった返している。青年ガイドの旗の下、トロッコ電車で滝口に向かう。ごうごうという滝音と水煙に向かって木橋を渡っていく。途中、カルピンチョというねずみ科の動物に出会う。かばんや手袋にすると高級品のようだ。この時期は水量が多い。「悪魔ののど笛(ガルガンタ・デ・ディアブロ)」といわれるところは、雨だか水しぶきなのか解らないがびしょ濡れだ。名前も凄いが、確かに悪魔が大量の水を飲み込んでいるような感じだ。昼食は公園内のレストランでまたアサード。しかしここは昨夜と違い美味しい。午後も滝めぐり。滝三昧である。最後は、滝突っ込みツアーだ。救命具を付け、滝壺まで向かう。ヤッケを着ていても、パンツまでずぶ濡れだ。デジカメのファインダーまで曇ってしまう。上陸後、軍用トラックに乗せられ、ジャングルのような公園内を案内される。鳥や動物、植物の種類が豊富なようだ。アルゼンチン人は殆どいない。海外からの観光客ばかりだ。ホテルに戻り空を見上げると、満月が黒い雲に覆われている。湖面に映る月を見ながら滝を散策するのが、このツアーの呼び物でもある。結局、満月ウォーキングは中止だ。「月に群雲、花に風」ままならないのがこの世の常。残念。
昨夜の不味いレストランは止め、別のレストランへ。食後、カジノへ繰り出す。ペソかと思いきや、全てドル。最早ここはアルゼンチンではない。遊びのつもりでルーレットに100ドルを投資。ちびりちびりとせこく勝ち続け、結局200ドルに。既に時間は2時だ。ペソに換金して、満足した気分でホテルへ帰る。疲れは極限状態である。
イグアスの滝 サン・イグナシオ・ミニ遺跡
サン・イグナシオ・ミニ遺跡へ。これは1609年から1768年までのスペイン、イエズス会の伝道所遺跡だ。世界遺産に指定されているが、風化が進み、保存状態は悪い。映画「ミッション」の舞台にもなったところである。宣教師のことをスペイン語で「ミシオネロ」という。これからミシオネスの名が付いたと言われている。
ミシオネス州はアルゼンチンの北東端にあり、人口100万、マテ茶、タバコの栽培は国内最大である。日本の移民も多く、マテ茶の栽培に大きな貢献をしたと聞いている。ポサーダスは人口25万、ミシオネスの州都である。
イベラ湿原 コリエンテス
鶏の鳴き声で目を覚ます。「コケコッコー」と聞こえるが、こちらの人には「キッキリキー」と聞こえるそうだ。結構寒い。晴天だ。イベラ大湿原の中央にイベラ湖がある。50万ヘクタール、沼地のような湖だ。「イベラ」とは「輝いた水」という意味だそうだ。ボートで周回する。ワニが甲羅干ししている。小振りでカイマンと呼ばれるめがねワニだ。カルピンチョ、カピバラが葦の陰でじっとしている。蛇がとぐろを巻いて動かない。アナコンダだ。沼の中にはドラードという金色の魚がいるとのこと。鶴のような、鷺のような鳥が乱舞する。静かに移動する。時間が停止した感じだ。
戻ると、湿原管理事務所の人達がロクロ(インディオが食べていたというとうもろこしが入ったスープ状の食べ物)とアサードを作って待っていてくれた。物静かな人達だ。とてもアルゼンチン人とは思えない。聞くとドイツ系だという。
アルゼンチンはドイツ系の移民も多い。第2次世界大戦後の移民が多いようだ。その頃は既に、土地の肥えたパンパと言われるアルゼンチン中央部は、スペイン、イタリア系に占められており、赤土で土地の痩せた、いわゆるメソポタミア地方といわれるミシオネスやコリエンテスしか空いていなかったようだ。この地方のフォルクローレがバイオリンとアコーディオンを使ったドイツ民謡風であるのもうなずける。
このもの静かなドイツ系移民と別れを告げ、再び悪路を四駆でコリエンテスに向かう。途中、蟻塚におしっこをかけてみるが崩れない。蟻の唾液で固めてあるそうだ。高いもので50センチはある。左に金星、「宵の明星」、右に17夜の月、「寝待の月」を見ながら夕暮れのコリエンテスに到着。
コリエンテスは「水の流れ」という意味で、コリエンテス市を流れるパラナ川は雄大で、沈む夕日がとても美しい町だ。コリエンテス州は人口90万、州都コリエンテス市は30万、北東部の中心都市である。以前はパラグアイの領土であったが、戦争に敗れてアルゼンチン領になった。インディオの血が濃く、パラグアイと変わらないそうだ。もし、戦争がまた始まったら、どちらに付くか解らないともいわれている。
夕食はこの川にちなんで、魚料理とする。其処で、肉牛100頭を飼っているという日本青年に会う。家族と共に国籍を得ているとのことであった。なかなかの好青年である。